2013年12月7日土曜日

12月7日の活動報告

お題『長門(艦これ)』

話の初めに、一言だけ言わせてもらおう。
やれやれ。―――どうしてこうなったッ!?



どうしてこうなった、とは言ったが。そう問われたところで、もちろん読者の皆様方には俺が今どういう状況下にあるかなど把握する術はないだろうし、そもそも俺が何者であるかということも知らないであろう。
――俺の名はアレックス・カブレラ。もちろんこれは本名ではない。これからこの話を綴る語り部としての俺を表す記号である。アレックスはアレキサンダー大王を、カブレラはカブレラストーンを意味する。併せてアレックス・カブレラだ。たしか同名の野球選手が存在したような気もしたが、いかんせんこの世界に存在する俺には何のことだかわからん。もしも心当たりのある読者の方がいたら是非教えてくれ。
――さて。無論そんなことはどうでもいい、本題に入ろう。あれは昨日俺がサークル活動をしていたときの事。いつものように平和な活動をしていた俺たちのもとに、突如として悪夢は訪れた。
ばーん、と大きな音を立てて勢いよく扉が開かれる。誰だ、俺らの日常に水を差すふてぇ奴は!?そもそも俺たちのいるこの部屋はサークル所有の部室ではない。学校から有り難くお借りしたものだ。万が一扉が壊れたらどうする?俺たちが大事に大事に使ってきた扉をこんな乱雑に扱う不届き者のせいで、俺らが学校側にお叱りを受ける羽目になったらどうする!?――などと一瞬思考の渦に巻き込まれた俺だが、図々しく部屋に上がり込んできたその女の一言によってそんな思考は吹き飛んだ。

   「――お前達! 絵心に自信があるのだったな。 ――私の姿を描け!」

静寂が部屋を包む。――誰だお前は!?長い黒髪と、きりっとした表情の可愛らしい顔立ち。やたらと腹を晒す涼しそうな服装、そしてこれから第三次世界大戦でもおっぱじめる気かとでも思わせるようなゴツい武装。なんだろう、こいつは。ひょっとしたら今俺たちのいる部屋の扉は、日夜こんな格好をした美少女達が超常バトルを繰り広げているSFファンタジーな異空間へと繋がっているのか?まあ、そんな非日常な事態が生じるワケがないな。ではこいつは何だ、非常識なコスプレイヤーだろうか?ああわかる、そんなに気合の入ったコスプレ衣装を作り上げたのなら、それを人に見せたくもなるだろう。確かに素晴らしい出来栄えだ。うん、俺が保証する。だが初対面である俺たちに自己紹介もせずにその姿を見せ、あまつさえ姿を描けなどと要求するのは、あまりにも不躾ではないか――そんな集団的無意識がこの空間に刻まれていく中、女はつかつかとテーブルの前まで進むと、どかっ、と靴を脱がずに無遠慮にテーブルに足を上げる。

  「私が戦艦長門だ。よろしく頼むぞ、HTAの諸君。この私をモデルにできることを光栄に思うがいい」

戦艦長門と名乗った美少女は、ふふんと胸を張る。だから誰だお前は。光栄なのはお前のオツムの方だ。――だが事情はどうであれ、このような奇妙奇天烈、摩訶不思議な出で立ちのリアル美少女をモデルに絵を描いて良いというのなら、美術を嗜む我々が喜ばないわけがない。絵描きとしての誉れであるというのもまた否定はできない。いいだろう、戦艦長門!お前が何者でどういう過程を経てここへやってきたのかは知らないが、その美貌を思う存分じっくりと眺めまわしてやろう、後悔しても知らんぞ?そういうわけで、俺たちの非日常な活動は始まったのだった。――やれやれ。俺は深く溜め息をついた。
さて、奴がとったポーズを俺たちは書き留めたわけだが、それを一つずつご覧いただくことにしよう。

1.ジョンソン(仮)、もしくはウィリアムス(仮)
うむ、男らしい。ドラムがでんどんでんどんと鳴り響きトランペットが出撃を祝福しそうな、勇ましい仁王立ちである。

「フッ、なかなかやるな。全体のバランスがいいし、きりっとした表情も整っている」

戦艦長門はこの絵を大層気に入っていた。なるほど、確かに絵のバランスはいい。しかしせっかくの女性的なプロポーションがこれでは強調されないではないか。だいいち、このポーズを取るのならもう少し肩が上がるのではないだろうか?それにもっと線ははっきりと描くべきだ。俺がそう文句をつける一方で、戦艦長門は絵を持って小躍りしていた。――やれやれ。俺は溜息をついた。


2.トーマス

戦艦長門はびしっ、と手を伸ばし、進軍の矛先を指し示した。

「線のタッチが柔らかくて綺麗だな。可愛らしい絵柄だ」

そうかそうか、気に入って貰えたようで何より。だが左手の向きに若干の違和感を感じるのは俺だけだろうか?それに右手がフワフワしていてよくわからんぞ。


3.ムーア(仮)
勇ましいポーズを取り続ける戦艦長門だが、ここは俺たちの神聖な活動の場だ。郷に入らば郷に従え、というだろう。もっとアイドル的なポーズをとらせることにした。

「線にメリハリがあって趣があるな。立体感もあるし、気に入ったぞ!お前には素質がある、今度また描いてくれ!」

無茶を言うな。なんだ、その、うちの部員は線を薄く描くのが好きなのだろうか?確かにメリハリのある体型だが、ちょっと首や腕が細すぎて心配になってくるぞ。

4.原

もっとだ、もっと女らしいポーズをとらないか!俺は戦艦長門に、テーブルに横になるように指示した。…フヒヒ!

「お、おおう… か、描きこまれていて丁寧だな。」

若干照れている戦艦長門を脇目に、俺は鼻息を荒くして歓喜した。グッジョブだ、原!艶やかでいいッ!豊満な乳房の質量感も――

5.ランディ・バース

「思い知ったか下衆が! フッ、この活き活きとしたポーズと表情はどうだ?」

――撃たれた。唐突だった。俺の頭上に『205』というダメージ表記が飛び出す。その兵装は飾りじゃなかったのか!?なんて物騒なことをするやつだ。戦艦長門はどうだと言わんばかりにさらりと髪を流し、びしっと左手を向けてきた。
で、その活き活きとしたポーズだが、少々胴体のラインが気になるぞ。肩のラインとズレてはいないか?あと右腕が短い!

6.アニマル・レスリー

ふらふらと立ち上がる俺に向かって、ざっと構える戦艦長門。部員の一人がうまく絵にしてくれたようである。

「なかなかいい構図だ。力を溜めている様子がよく描かれている。今にも飛びかかりそうなポーズに恐れおののくがいい」

そう言って絵に見とれている戦艦長門に、ふと隙が生まれた。左の太ももがどうなってるのかよく分からないのは気にしないのか。――俺たちの大事な活動部屋で破壊活動を行ったお前は許さん、懲らしめてやる!俺は戦艦長門に攻撃を仕掛けた。

7.ノン糖(仮称)←フィルダー(仮)

「フッ、効かぬわ。…久々に、切れてしまったよ。」

やばい。本気で怒らせてしまった。ばきん、とリミッターを外して抑え込まれた本来の力を解放した戦艦長門。そのときの姿を部員の一名が絵にしたが、その姿にはもはや俺がツッコミを入れられる余地すらない。俺は即座に土下座を試みたが、時すでに遅し。画面奥から飛び出してくる砲台が、ぎらりと俺に狙いを定めた。

8.アレックス・カブレラ(俺)

「全主砲、斉射…撃て!」

砲弾の雨嵐をくらい、きりもみ回転して吹き飛ぶ直前の光景を俺自身が絵にしたのがコレだ。
ふふん、どうだ。うまく描けているだろう?…それが俺の発した断末魔であった。
――轟く発射音。 ――薄れゆくイシキ。 ――消えるセカイ。
――その中に、聞こえてくる、誰かの――声(コトバ)。

「まだまだ精進が足りないな。臍の位置や腰が不自然だし、左足にも違和感がある。出直してこい」

――俺は――
――。

かくして、戦艦長門は満足して帰って行ったようだ。やれやれ、まったくとんでもない目に遭った。もう二度と彼女がこの部屋を訪れることはないのだろうが、もし再び彼女の姿を描かされることになったら、今度はもう少しうまく仕上げてやろう、と誓う俺なのであった。
――やれやれ。俺は再び溜息をついた。


だが。
今からそう遠くない日に、再びその機会が訪れるということを、当時の俺たちは知る由もないのであった。

4 件のコメント:

  1. 1日でこれだけ書いてくるとはたまげたなぁ・・・

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  2. 再び訪れるんか、備えねば!おもしろかったです、HTAにはこんな可能性があったのか…

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  3. フィルダー……誰なんだ……

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